昼に五稜郭公園に家族で花見に出かける。函館の春は東京よりひと月遅い。桜も、足下の草花も今が盛り。堀にボートと並んで浮かぶのも、カモではなくカモメなのが海の街らしい。さすがに連休なので人出も多いが、堀と堤に挟まれた窪地のような場所に風呂敷を広げ、朝から姉が作ったおにぎりと唐揚げ、卵焼きを食べる。北海道の桜にはつきもののジンギスカンの匂いや歌声もここまでは届かない。陽光と鳥の声ばかりが静かに降り注ぐ。
公園の中央では、現在かつての箱館奉行所本陣の復元工事がおこなわれている。明治4年(1871年)に解体され、大正3年(1914)に公園として開放されて以来、奉行所の跡地は広いグラウンドになっていた。近くの高校に通っていた姉は、体育の授業をここで受けたという。もはや奉行所をその目で見た人間は存在しない。松林に縁取られた、だだっ広いグラウンドの光景こそが、函館市民にとっての原風景なのだ。
いつか、公園のグラウンドで野球やサッカーをした人間のすべてが、この世を去る日が来るのだろう。もうすぐ、奉行所のある五稜郭を当たり前の景色として気にも留めない世代が、再び大多数となるだろう。あらゆる人も風景も、わずか数十年で終わる人の一生の前を、一瞬で通り過ぎていく。あらゆる時間を同時に生きるトラルファマドール人なら、同じ場所に同じ城郭がストロボのように消えては立ち現れる姿を見ることができるだろうか。
公園を去り際に、桜の下でジンギスカンを楽しむ大勢の人々を目にした。年々歳々来ては去る、桜と人とジンギスカン。これもまた、函館市民の、あるいは道民の原風景なのだろう。まあうちはジンギスカン嫌いなんで関係ないんですけどね。
日々のつぶやき
2009-05-02
五稜郭の桜
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