日々のつぶやき

2009-05-18

似てるようで似ていない

所用で外に出たついでに新雑誌『ゲッサン』(小学館)を立ち読み。とりあえず『あずまんが大王』新作だけ読んだのだが面白い。連載が終わらず今も続いていればこのような形になっていたのだろうか、本質はそのままに表現が洗練されていた。『よつばと!』休載もこの際我慢しよう。

ところで、『BSマンガ夜話』の『よつばと!』回で、いしかわじゅんが「『あずまんが大王』はよくある萌え4コマ(という表現はしていないが)から一歩も出ていず面白くない。『よつばと!』はそこから踏み出したことがエライ」という主旨の発言をしていて、他の出演者も特に反論しなかったと記憶している。

「萌え4コマ」というジャンルの嚆矢のひとつともいえる『あずまんが大王』に「萌え4コマだから悪い」と言わんばかりの評価はどうかと思うが、ある年代以上の読み手にとって「どれもこれも似たようなもの」に見えてしまうのは仕方ないことだろう。だが、『まんがタイムきらら』を1冊買って隅々まで読めば、それぞれの作品に(薄くとも)作者なりの個性があり、作品ごとに主観的な優劣を付けることもできるのがわかるはずだ。

同じ4コマフォーマット、同じような絵柄、同じようなキャラクター配置でありながら、それなりの個性を持った表現が生まれる。これは、同じようなメロディ、同じようなコード進行、同じようなリフを持つ、いくつもの名曲を送りだしてきたロックの歴史に通じるものがある。だが、ストーンズとザ・フーの区別のつかない人は、現実に山ほどいるだろう。様式性と抽象度が高くなるほど聴き分けは難しくなる。テクノやヒップホップならなおさらだ。

このように、ジャンル特性に則った表現の差異を味わい分けるには、受け手にリテラシーが要求される。それを持たなくてもまったく問題はないが、門外漢の自覚があるならば、己の目や耳の絶対性を疑ってみる謙虚さがあっていい。いしかわじゅんは「萌えリテラシー」を持たない人だろうが、それとは別に、様式より前衛を好む美意識の偏りもあるのではないか。例えば、中期ビートルズの果敢な前衛性を称揚するために、ロックンロールとR&Bの様式への愛を率直に表明した初期ビートルズの音楽を軽視してみせる態度にそれは似ている。一愛好家なら(もったいないと思うけど)それもいいが、批評として機能する言説なら問題がある。

私は『よつばと!』好きだけど、『あずまんが大王』もやっぱり好きだ。大阪!