日々のつぶやき

2008-04-24

夕食

カルボナーラとオニオンスープ。鍋に油を敷き、スライスした玉葱を木べらでかき混ぜながら中火で延々と炒める。とにかく玉葱が焦げないように目を離さないこと。そのうち玉葱が飴色になった頃合いに水を注ぎ、鍋肌にこびりついた飴色の焦げをこそげ落としながら加熱(この焦げが出汁になる)、コンソメ、胡椒、ベーコンを投入して適当に煮込む。これをグラタン皿に盛り、ガーリックトーストを載せチーズを振りかけてオーブンで焼けばオニオングラタンスープになるのだが、面倒だし機材も足りないのでこれで完成。

サラサーテの盤

昼下がりに上石神井の魚料理屋にて「豚バラ肉の梅肉おろし載せ定食」を注文。なぜ魚料理屋で肉料理と訊かれそうだが、いや訊かれなくとも説明すると(冗長)、最近鯖や秋刀魚の油が体に堪えるようになってきて、むしろ豚肉や鶏肉のほうが胃にもたれないのだ。いやまったく歳には勝てませんなーははははは。
それはさておき。しばらくして料理が狭いカウンター席に運ばれてきて、広げた本や携帯電話をあわてて片付ける際に思わず「すみません」と、相手に伝えるでもなく口の中で泡のはじけるような小さくか細い声が漏れた。
その発声の加減が絶妙だったのであろう。奥から急ぎ足で店の女将が現れて、カウンターの店員に「今『すみません』って呼んだよね?」「え、言ってませんよ」「嘘、女の人の声で『すみません』って聞こえたよ」。
そこにいる女性は、女将と店員の二人、客は私だけで女性客はいない。
「外の話し声が聞こえたんじゃないですか」「違うよ、そんな遠くから届くような大きさの声じゃなかったよ」
…………。
「やだー、怖い」「確かうちの店が入る前にも女の店員さんがいたのよねー」
女将が不安を紛らわすかのように、不吉な因縁を店員相手に探り当てようとするやりとりを聞きながら、どうにも気まずい気分で飯を食い終えた。
もしあなたがいつか上石神井を訪れて、駅前の魚料理屋に入ったとしよう。とりわけ夜の時間帯ともなると、酔客相手に女将が「こないだ、こんなことがあったのよー」などと、聞こえるはずのない声が虚空から響いたという怪談噺を披露する場面に出会うこともあるだろう。
すみません、その枯尾花は私です(ちなみに飯そのものは美味かった)。